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今夏の読書感想文のオススメ本『木を植えた男』

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夏の課題の難関と言えば、読書感想文。
やりたくない夏の課題といえば、読書感想文。

何かと悪評の読書感想文ですが、やるからには楽しんだ方がいいですよね。

そこで、大竹稽からオススメの一冊を。

『木を植えた男』ジャン・ジオノ

この作品は、アニメーションの方が知られているでしょう。ジブリ作品に影響を与えたカナダのアニメーション作家、フレデリック・バックが1987年に本作品をアニメーション化しました。2011年には、フレデリック・バック展が日本でも開かれましたね。その目玉が、『木を植えた男』でした。
 

短編小説であるため、読み終えるだけなら、ものの数分でしょう。しかし、その味わいはとても深い。なんなら、一生かけても味わえる深みを持っています。

冒頭には、こんなことが書かれています。

« Si cette action est dépouillée de tout égoïsme, s’il est absolument certain qu’elle n’a cherché de récompense nulle part et qu’au surplus elle est laissée sur le monde des marques visibles, on est alors, sans risque d’erreurs, devant un caractère inoubliable. »

「行いに微塵のエゴイズムがなく、この行いがなんの見返りも求めず、そしてこの世界に際立った跡を残したとき、私たちにとって忘れがたい人物を目前にすることになる」

ところで、あなたは、「すぐに認められる成果を出せ!」とプレッシャーをかけられていませんか?

認められる成果も必要でしょう。しかし、それだけに縛られては、人生が競い合いになってしまい、息苦しくなりそうです。認められなかった行いは、無駄でゴミですか?それによって、行い自体も「なかったこと」になるのですか?

これは、時代の空気とも言えるでしょう。ユーチューブなどにも「秒速」「爆速」「成果」の文字が乱立します。

でも、こんな時代だからこそ、木を植え続けたブフィエの行いには、共感が生まれるのではないでしょうか。

陰徳。

仏教の言葉でもありますね。

認められなくてもいい。未来へ期するものがあるのなら、派手なことではなくても、無駄に見えてしまうことでも、自分にできることをやっていく。それは、強いられることではありません。

妻と息子を失ったブフィエは、きっと、世界の未来を思い描いたのでしょう。しかし、大言壮語しません。行いは、全く目立たないひっそりとしたものでした。

物語の中で、世界は二つの大戦を経験しました。が、ブフィエの行いは変わりませんでした。そして、それはしっかり実を結び、森や村を蘇らせました。

人間は自然であり、自然は人間である。

この時間感覚に沿ったペースに、素直になってみませんか?きっと、私たちの心と身をリラックスさせてくれると思いますよ。


新刊、好調です!
こちらも夏の読書感想文に。